スポーツ栄養・生化学研究室

研究

人間は、口から摂取した食品に含まれる栄養素や機能性成分に支えられています。食品は自身が消化吸収され作用するだけでなく、生活習慣や腸内細菌と相互作用して、様々な生体応答を引き起こしもします。こうした人間と食品との関りを研究するのが人間栄養学(Human Nutrition)です。
人間栄養学は人間(生化学、生理学、解剖学、疫学、心理学など)と食品(分析化学、微生物学、育種学など)との関係を総合的に理解します。当研究室で注目しているのは、人間サイドでは、身体能力、身体づくり、疾病予防、健康、食品サイドでは、摂取量やタイミング、新たな機能性や成分などです。
これら人間と食品の関りを物質レベルで(化学の言葉で)明らかにし、スポーツや健康づくりなど、さまざまな場面で直面する現象や問題を人間栄養学の観点から理解し、その成果を現実の場面にフィードバックするのが研究室の目標です。

当研究室ではこうした視点から研究に取り組んでいます。どの分野もそれぞれ独立しているのではなく、互いにオーバーラップして食品と人間の関わりに注目しています。

一方、人間栄養学は分野横断的な総合科学であるため膨大な科学的エビデンスに支えられ、日々進化しています。そのため、『日本人の食事摂取基準』のような指針は、定期的あるいは適時にアップデートされています。こうした科学的なコンセンサスの日本での普及・啓蒙にも取り組んでいます。

研究活動

■食品と血液・循環系

人間は60兆個の細胞で構成されていますが、ほとんどの細胞は必要な物質の取り込み、不要な物質の排泄、他の細胞との連絡を、血液を介して行っています。そのため血液・循環系は、運動機能、認知能力、がんなど様々な面に影響を及ぼします。

鉄の栄養状態は、運動機能に影響を及ぼします。しかも、貧血でなくてもそうですし、現実に鉄の栄誉状態のせいで本来のパフォーマンスを発揮できない人も多くいます。
この状況を理解し、解決するために鉄栄養状態やNOと運動機能に関する研究を展開しています。

・貧血・鉄欠乏
・シトルリン(⇒ NO)
  ★ 順大生まれの velox

■食品と骨・骨格筋
骨と筋肉はスポーツにとって重要です。一方、日本は長寿国ではありますが、寿命と健康寿命との差が問題になっています。自立して生活するためには、自分で立って移動するために骨と筋肉が欠かせません。
ところが、骨密度は20歳程度でピークとなり、その後は減少するばかりです。そのため若いうちから骨をしっかり作っておかなければなりません。一方、筋肉は年をとってからでも鍛えることができますが、そのためには材料となるたんぱく質(アミノ酸)が必要です。しかし、たんぱく質も過剰に摂取しても筋肉にはなりませんし、かえって腎臓に悪影響を与えるかもしれません。そのため、摂取するタイミングと量が重要です。

そこで下記のような取り組みをしています。

・骨づくりに必要なビタミンD、ビタミンC、ビタミンKの摂取量と骨の状態
・ひざ痛を緩和するクリルオイル
・たんぱく質の必要量

■グルコースと運動・健康

グルコースは使いやすいエネルギー源ですが、反応性が高く高血糖だと糖尿病になります。そして、この血糖値は、食品、骨格筋、運動などと密接に結びついています。

運動時のより良いパフォーマンス、あるいは日常生活での血糖値管理に着目して、以下のような研究をしています。

・運動時の炭水化物補給と血糖値・パフォーマンス
・千葉県銚子市に多発する高血糖の原因と対策
・血糖値の上昇を防ぐ食品

■食品-腸内細菌叢―腸管―生理機能

食品(栄養素、食品成分)は、口から入り消化管に直接、あるいは血中に入って標的細胞に作用します。また、腸管内での変換や、腸内細菌叢の変化を経て生体に作用を及ぼすこともあります。
このプロセスは、人間栄養学の大きなテーマですが、未だ不明なことが多いフロンティアです。
栄養素機能だけでなく、食品の第2次機能(味、嗜好性)、第3次機能(生体調節機能)の解明を通じて、このフロンティアを切り拓いてゆくことを目指して、以下のような研究をしています。

・ラクトフェリンによる自律神経機能の調節
・カフェイン、タウリンの生理作用
・腸内細菌叢と食事、運動、健康

スポーツ栄養勉強会(すぽべん)

現在、医療も栄養もスポーツもEvidence-basedであることが求められるようになってきています。これまで日本の「スポーツ栄養」は、evidenceよりも現場主義の立場が強かった(実戦経験重視だった)のですが、国際化が進んでいることから、ガラパゴス化を避けるためにも、国際標準を積極的に導入してゆく必要があります。
そこで、国際標準のスポーツ栄養を勉強するために、スポーツ栄養勉強会(すぽべん)を開催しています。
ここから、現場での課題が明らかとなり、研究テーマに発展してゆくこともあります。

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